アレルギー表示がスタートして10年近くになりました。
消費者、特にアレルギーの患者さんあるいはその家族の方々にも、表示のルールを含めその理解が進み、表示により加工食品を選べるようになってきました。
平成19年、食物アレルギー児の保護者を対象とした宇理須先生(藤田保健衛生大学)らの調査によれば、ほぼ100%が表示制度のあることを知っており、また、約80%が役に立っていると回答しています。
このことから、アレルギー表示はアレルギーの患者さんには有用なツールとして、「一定の役割りを果たしている」ということができると思います。
しかしながら、表示は、一括表示欄(名称、原材料名、内容量、製造者などを記載)の原材料名記載部分を利用して表示されているので、その文字サイズも含め、決して見やすいものではありません。
このことに問題意識をもった企業により、ここ数年来、アレルギー表示対象品目(義務表示7品目、推奨表示18品目)を、「任意」で一括表示欄の外にまとめて表示する事例が散見されるようになってきました。対象は、義務表示品目のみ、あるいは推奨品目も含めたものであったり、また、表示方法は、マトリックスで入っている入ってないを表現したり、対象品目に○×を記載したりとまちまちで統一はされていません。しかし、原材料欄から読み取るよりも、そこを見ればわかるという利便性は確かにあります。
今回の回収事例は、このような背景の中から起こった出来事です。企業の善意が、逆に事故を起こすきっかけを作ってしまったことになります。
今回のアレルギー表示については、一括表示欄での表示に間違いがなく、任意で欄外に表示したものに間違いがあったということですので、食品衛生法上での表示違反対象とはなりません。しかし、誤って購入して事故が起きることが十分考えられるのでまず、所轄保健所など行政に問い合わせてその指示に従うことが重要なポイントになってきます。
今回の事例では、速やかに社告をすると同時に自主回収を行い、あわせて行政に対し「自主回収報告制度」に基づき報告し、その指示に従うという処置が取られています。
2010年9月22日
太田裕見 NPO法人食物アレルギーパートナーシップ
参考
2010年9月10日アップ記事
【情報】一括表示に問題はなく、任意表示にミスがあり自主回収されました。画像入り
https://www.atopicco-foodallergy.org/consumer/NewsGeneral.do;jsessionid=4CA9298A00CB06D9E09D9D50D99FBA4C?newsId=N0000389&newsSubNo=1&updateNo=2&generalNewsType=03